【韓国語翻訳】漫画翻訳について
こんにちは、フリーランス翻訳者のshiro(@shironimkorea)です!
先日、私がしている翻訳の仕事について振り返ってみたのですが、今日はその中でも「漫画翻訳」について詳しくまとめてみたいと思います。
私のいう「漫画翻訳」はWeb漫画、いわゆるウェブトゥーンの翻訳です。日本でもアプリケーションを利用して簡単に漫画が読めるようになっていますが、まだまだ紙媒体の漫画市場も活発ですよね。
韓国ではネット上で公開されるウェブトゥーンが主流でNAVER(ネイバー)やDaum(ダウム)、Kakao(カカオ)などなど…配信元もたくさんあります。
一連の流れ
設定集を作成する
作品のタイトルからキャラクターの名前、口調、地名やその他人間関係などをメモする「設定集」を作ります。自分のつけた名前や設定でも、登場頻度が多くないと忘れてしまったり、ほかの作品と混ざりかねないので翻訳作業をする際には設定集がとても重要になってきます。
ここでポイントになるのが「ローカライズ」という言葉です。いわゆる「現地化する」という意味です。以前、韓国の代表的なスナック菓子が出てきたのですが、これを誰もが知っているような日本の国民的スナック菓子に置き換えたり、韓国の学生は放課後にトッポッキなどの軽食を食べますが、これが日本の学生だったら…とかこういうことを考えて適用するのがローカライズです。
翻訳する
翻訳方法(ファイル形式)は、私が知っているところではPhotoshopで翻訳、エクセルでの翻訳、会社独自のシステムを利用して翻訳くらいでしょうか。
翻訳スタイルとしては、一度全体を翻訳してから、数時間~数日おいて最終チェック・修正をして納品しています!シャワーしているときなど、他のことをしているときに良いセリフが思いついたりすることも多いです(笑)
個人的には慣れもありますが、原文の上に日本語をかぶせるだけでいいPhotoshopでの作業が好きです♪Photoshopはショートカットキーを使うと作業時間をかなり短縮できると思うので、後ほどこのブログの最後に自分用のメモとして残しておきたいと思います。
フィードバックをもらう
これは登録する翻訳会社や経歴、掲載元などによって変わってくると思います。フィードバックのない場合もありますし、最初の数話だけ簡単にフィードバックをもらう場合もあります。
私たちフリーランス翻訳家は、翻訳会社からのフィードバックをもらうのが基本ですが、翻訳会社がさらに契約を結ぶ掲載元からフィードバックをもらえることも。掲載元?配信元によって好みが分かれることもある(言語により忠実に、など)ので、しっかりと熟知することが大切です。
納品
指定のファイル形式で納品をします。
リサーチ
今後の参考にするため、ネットやコメント欄で作品の評判などを検索し、チェックします。
意訳 vs 直訳
漫画翻訳=意訳という認識を持っていられる方も多いかと思います!
実際のところはどうなのか? と問われると、「時と場合による」と答えるしかないでしょうか…
韓国の文化を日本化して読者に親しみを持ってもらう「ローカライズ」は大前提ですが、個人的にはあくまで「原文の語句ありき」だと思います。
もちろん、他の分野に比べたら意訳はかなり必要にはなる方だとは思います。
しかし、基本的には原文に乗っ取って枠組みを作ってあげたあとで必要に応じて意訳を使用します。クライアントの好みにもよってきます。
以前、韓国語の「밀다」を使ったダジャレが出てきたことがありました。
밀다は日本語にすると、押す、推す、剃るなど…たくさんの意味があってこの밀다を使った言葉遊びが出てきた際には、シーン全体の雰囲気に重点を置き「意訳」をしました。
こういったダジャレなどは毎回頭を悩ませています…
ビジネス翻訳に比べて自由度が高く、意訳が必要な場面が多いのは事実だと思います!!若者言葉の場合はもちろん意訳の頻度が高くなりますし、普通に「ら抜き」言葉とか、話し言葉を使うので、文章がかたくなったり不自然にならないように気を付けています。
役に立つツール
韓日辞典も使用しますが、それよりも使用頻度が高いのが「국어사전」、そして類語辞典です!
국어사전は国語辞典、いわゆる韓韓辞典ですね。特に漫画の場合は若者言葉や略し言葉、話し言葉などがかなり多いので、この국어사전は欠かすことができません。
また、類語辞典も個人的にかなり使用します。この前「悪辣」という言葉が出てきたのですが、普段あまり使わない言葉であり、また漫画に使用すると少し堅苦しい雰囲気になってしまう…そんなときに類語辞典を使用します。
悪辣の類語としては、凶悪、凶暴、極悪、腹黒いなどなど…たくさんの言葉が出てきましたが、その中からシーンにあわせた単語をチョイスしました!
というように、韓国語の語彙力はもちろんですが、自然な日本語、そして豊富な日本語の知識がとても重要だなと日々感じています。
국어사전と並行して「네이버 지식in」も役立ちます。Yahoo知恵袋と似たようなサービスで、ユーザーの質問に他のユーザーが答えてくれるものです。
Photoshopショートカットキー
翻訳で使う作業は限られていますが、いくつかポイントを押さえておくと作業効率があがります。
・Alt + ↑↓キー:行間調節(ふりがなをふるときに便利)
・スペースキー + カーソル:画面を好きな場所に移動
・Ctrl + J:レイヤーコピー(特に同じ効果音などが連続するときに使用します)
・Ctrl + G:グループ化(翻訳した文章を選択してから一気にグループ化するのに使用します)
・Ctrl + Shift + S:他のファイル名で保存
・Ctrl + S:上書き保存
・Ctrl + Z:ひとつ前に戻る
・Ctrl + C:コピー
・Ctrl + A:全体を選択
とりあえず思いつくのはここらへんですが、後半の方は普段のPC作業でもよく使用するショトカットキーですよね^^;;
漫画以外の翻訳作業でもそうですが、非常事態に備えて?常に左手はCtrl+Sで保存を繰り返しています(笑)
こんな人に向いている
もともと漫画が好きなので、一読者としてたくさんの作品に触れられるこの仕事にやりがいを感じています。
ジャンルにこだわらず、たくさんの漫画を読むようにしていますが、「こういう効果音いいなぁ~」とか、メモしながら読んだりするのでひとつの作品を読むのに結構時間がかかったりします。
メモした擬態語は自分なりにエクセルにまとめています。
最近仕事で漫画の翻訳をすることが多いのですが、擬態語・擬声語をやっと整理し始めました。例えば足音だけでもいくつも言葉があったり、辞書に載ってない言葉が多いのでいつも混乱します(笑)#韓国語 #翻訳 #韓国語勉強 pic.twitter.com/9SbzCAlPox
— shiro (@shironimkorea) 2019年1月11日
今後に向けて
少しずつペースが掴めてきたのですが、複数の翻訳会社と契約してだんだんと作品数が多くなってきて、さらに作品によって週の納品数も変わってくるので、いまのところ一週間の納品数は8~10話くらいが自分の能力およびライフスタイルにあってるのかなと実感しています。
子供が産まれて落ち着いたら、もっとたくさんの数をこなしていきたいのですが…
今後も原作の良さを生かせるような素敵な翻訳ができるように、そしてスピードやクオリティをあげていけるように、日々精進していきたいと思います♬